A Change is Gonna Come (2) ~生きながらの輪廻転生~


私はこれまで何度か生活・仕事・居場所を変えているが、その都度新しい人たちと出会い、新しい経験と知識を積んできた。 

都市はおろか国もまたいでいるので、それぞれが全く違った世界であり、その都度自分が生まれ変わって新しい人生を歩んでいるようだった。それゆえ、過ぎた時代が遠い「前世」のように感じることもしばしば。


肉体の生死によって生まれ変わりを区切る『輪廻転生』という概念があるが、私が経てきた環境の変化によるリセットは、まるで『生きながらの輪廻転生』のようだ。

一度の生の中で数種の人生を体験できているのはラッキーなことだと思う。そして私には今、また新たな人生が近づいている。数年ぶりの、あるいは数年ごとの大きな変化が。

新しい人生、と言っても、それまでの学びを元に作られていくから、そういう意味ではやはりすべて繋がっている。環境が変わっても、主人公はいつでも自分、ということだ。前述の『輪廻転生』でも、肉体は入れ替わっても、魂の使命やカルマは変わらないというものね。


* * *

ところで、今迎えようとしている変化とは、転職と引越だ。ここ1年ほどチラチラと頭の中をかすっていたことだが、夏の始めに大きな仕事を終えた時、「今だな」と思えた。

それから就職活動を始め、少し前に決まった。同じ州内だが、トロントから少し離れる。引越しも初勤務も実は1週間以内だが、新しい話は追々書くとして、今は変化とタイミングの話に絞りたい。

私はカナダに来て約5年だが、今振り返ってみると、その前の東京時代を含めて、つまりニューヨークから日本へ戻った2011年(震災のあった年だ)をスタートとするこの7年が「ひとかたまり」だった気がする。それまでのベースであったニューヨークが突然自分の世界からなくなり、強制的に別なベースを求めた、模索の7年だ。

ただ、そこで本当に潜んでいた問題は、ニューヨークにいる・いないではなく、そもそも私が次なる人生の確固たる目標を見つけていない、ということだった。帰国によって尻を叩かれ、東京で働きだしたものの、あのままニューヨークにいても、この7年は「目標を求める時代」になっていただろうと思う。

NY・LICの夜景

また、厳密に言うと、具体的な目標うんぬんの前に、私はその大元となる人生の信条、軸のようなものをつかみたかった。そこさえつかんでいれば、目標は自然に定まり、自分の行動はそれに沿っていくわけだから。

しかし、それはなかなか見えなかった。この7年はまさに「暗中模索」、洞窟の中で手探りをするような状態であった。

その間、東京からまた北米に戻るチャンスを得たのは幸いだが、自分の軸がない、よって目標が定まらないという問題は、場所の変化によって解決するものではなく、東京の洞窟が、カナダの洞窟に繋がっていただけだった。
 
トロント市内の夜景

先が見えない暗闇、という意味で「洞窟」と表したが、外部と遮断された、という意味でも、私の生活は「洞窟」の中にあった。長時間の残業や不規則で特殊な仕事・生活環境によって、個人の自由や社会との関わりがかなり制限されてしまっていたから。自分の軸がないから、そういう制限にハマっちゃったとも言えるけど。

しかし、何がきっかけというわけでもなく、2年前くらいから、出口を直接目や手で探し求めることを止め、代わりに、目をつむって自分の内側の感覚で出口を探るようなことが自然と始まった。もうそれしか方法がなかった、とも言える。当ブログを始めたのもその頃だ。

そんな模索の仕方を少しずつ続け、今ようやく洞窟を抜け出すところに至った。でも、一体どうやって?

洞窟の端のぱっかりあいた出口に辿り着いたわけではない。そうではなくて、自分が洞窟の岩のわずかな隙間を通って、内と外を自由に行き来できる空気になればいいことがわかったのだ。

、、、って、いきなりぶっとんだ比喩になったけど(笑)、要するに、この7年間の模索を通して、7年前に自分にあったそもそもの価値観・世界観・認識・生き方自体が変わってしまった、ということを言いたいのだ。

自分の中だけで感じている概念を言葉で表すのは難しいのだが、もう少し具体的に言うと、人間的な欲に従うのでなく、自分を自然側にブレンドさせる、ということ。

おおーっ、まるで悟りの境地に達したかのような発言!?

いやいや、そんなたいそうなものではなく、ある程度人間の社会活動と半強制的に距離がおかれ、逆に動植物や自然、天体、さらには菌の世界を学ぶにまで至った近年の環境で、新しい目線を得たということだ。(この「自然」とは、科学的・普遍的・原理的な、広義の意味の「自然」。)


人間だけでなく、自然に目を向ければ、さらなる可能性が広がり、実は自分はもっともっと自由だった。今まで「当然」「正しい」と思えていたことも、ごく限定された世界でのことでしかなく、本当は思考や概念、価値観は無限なのだ。

そんな気づきを得たとき、洞窟時代が近いうち終わりを迎えることも悟った。

とはいえ、この気づきは内面的・象徴的・信条的なもので、現実はもちろん生活のためにあくせく働くことには変わりない。新しい生活や仕事だって、それはそれで新たな葛藤があるだろう。

でも、これからの生活スタイル・生き方は、今までと違った風になるような気がしている。何しろ今回は、単に仕事や居場所が変わるだけでなく、新しい信条をともなう出発だから。

このエントリの前編:A Change Is Gonna Come (1) ~ 過去を振り返る時 ~で、サム・クックの歌の詞 ♪It's been a long, a long time coming (ここまで来るのにとても長い時間かかった)の部分が今の自分の心境とかぶると書いたが、それは、いくつもの人生の時代と紆余曲折を経てここまでやってきたんだなあ、と改めて実感したから、、、。

* * *
 
ところで、面白いのが、ここでたびたび挙げる、人気ライター石井ゆかりさんの占いの話。天王星を軸にした私(牡羊座)の運勢サイクルは、2011年の東日本大震災の翌日、天王星が牡羊座に移動したときから始まり、2018-2019年にかけて天王星が牡羊座から出ていくまでがひとサイクルだそうだ。そして、それは真の自由を求めての模索の7年のはずだと。

うわー、狙ってないのに、この始まりと終わりの時期も、どんな7年になるかも、ピタリと当たっていてビックリ!

さらに、木星の動きでも、この11月は誰にとっても大きな切替タイミングらしいが、牡羊座は、いろんな縛りから解放され自由をつかむ一方、これ以降、遠出や移住を伴う新しい世界で「旅と学び」の期間が始まるそうだ。い、移住ですとー!こ、これもその通り!

しかも「自由」については、移動の自由、2011年からの価値観や生き方に関する縛りからの自由、人間関係や立場からの自由、と具体的に示してあるのだが、「誰か私のこと見てる??」ってくらい、私の状況とマッチしていてビックリ、、、。

これも何度も書いているが、決して占いに従って行動しているわけではない。(そもそも占いは読んだ直後に忘れて、あとで読み返してビックリするパターン。それに、占いに従おうにも現実的にその通りにできるとは限らない。)

今回の転職は、いつ終わるかわからなかった大きなプロジェクトがたまたま春先に終わったから決めたことだし、2011年の帰国やその後の模索だって、私のコントロール外のことだ。まさに、”星は何でも知っている”!?


さらには、ここ10日ほどの間で続き?があった。

16日頃に流れが変わり、人間関係に変化が訪れ、過去の見直しや再発見がある』、『水星が逆行し、普段ないことが起こる』という占い通りの、でも占いが無くとも十分に不思議なことが、特に人間関係でビシバシ起こったのだ。

例えば、それほど深い付き合いじゃなかった知人と考えていることが近いとわかり、その人が急に心強い友人に変わったり。逆に、共通の目的で心通じ合わせて一緒にやってきたと思っていた人が、実はそんな気持ちは無くあっさり去って行ったり。あるいは、私が陰でやっていた努力を見ていてくれた人の存在を知ったり。

私は何も「仕掛けて」いないのに、人間関係に隠れていた真意がここへきて現れ、淘汰され、再形成が起こった。

短期間で驚きや悲喜こもごもがあり、私自身がまだ感情を消化しきれていないが、きっとあとで意味がわかり、すべてが起こるべくして起こったことと納得するかもしれない。


また、仕事や生活上で残っていた現実的な課題も、最後の最後にすーっと整理されたり、解決の方向に向かったり。私が転職するから自分や周囲の人が急いで解決したのではなく、想像していなかった意外な展開で自然にそうなったのだ。

そんなわけで、いろんなことがあれ?あれ?あれ?と、最後の最後にうまい具合に整理され、収束し、まさにリセットモード。自分が選ぶ前に断捨離が勝手に進んで行くような?あるいは、ほんのいくつか必要なものだけ与えられて無人島に送り出されるような?

「不要なものは削られ、すべては整った。ただ自分の思うまま、自分の力を自由に使え」と、何かにささやかれているような、、、。

同じリセットでも、7年前は唐突に暗転、洞窟の真っ暗な暗闇から始まった。でも今見える景色は光を伴う「白」だ。真っ白になった空間の中、自分の立っている場所からすすっと道が1本先に伸びているようなイメージがある。


ふと、「死ぬとき」ってこんな感じかも?と、頭によぎった。それは同時に「再生」「転生」も意味する。

向こうからやってきた自然な終わりと自然な誕生。私の何度目かの「生きながらの輪廻転生」が、今起ころうとしている。


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